まず↓が、本記事をギュッと短くしたまとめです。
本記事の短いまとめ
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慈悲の瞑想には「ストレス低下」「健康長寿(アンチエイジング)」「ポジティブ感情が増える」「愛情深くなる」などの効果があることが、科学者たちの実験により示唆されている。
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共感力の高さが原因で共感疲れをしてしまう人に対しても、慈悲の瞑想は大きな効果をもたらす。
それでは具体的に見ていきましょう。
【慈悲の瞑想の効果1】ストレスを低下させる
慈悲の瞑想にはストレス低下の効果があることが、アリゾナ大学のチャールズ・レーゾン准教授の実験によって分かりました↓
アリゾナ大学のチャールズ・レーゾン(Charles Raison)准教授は、エモリー大学の新入生 61 人を被験者として、ネギ博士のアレンジした慈悲の瞑想を6 週間行ってもらうという実験を行ってみた。
すると、慈悲の瞑想を行った者はストレスが低下したが、瞑想しなかった者は、効果がなかった。
すなわち、瞑想はただ知識として知るだけではまったく役には立たないが、実践すれば、効果があることがわかったのである
ただ「ストレス低下」の効果は慈悲の瞑想に限ったものではなく、瞑想全般の効果として知られています。
詳しくは↓にまとめておりますので、よろしければぜひご覧くださいませ。
【慈悲の瞑想の効果2】健康長寿(アンチエイジング)
慈悲の瞑想には、健康長寿やアンチエイジングの効果があるようです。
キーワードは「テロメア」。
テロメアという長寿遺伝子があるのですが、慈悲の瞑想によってそのテロメアが長くなることが分かったようなのです↓
瞑想は、特にエピジェネティクス(持って生まれた遺伝子が、食事や生育環境などの要因で、発現具合が調整されるという現象)の分野で非常に注目されている。
染色体の先端にある長寿遺伝子テロメアは、加齢とともに壊れて短くなる。
この壊れた部分をテロメラーゼと呼ばれる酵素がきれいに修復することにより、テロメアが長く強くなり、細胞レベルで若さを保ち、加齢による疾病を抑制する。
テロメアを伸ばすために有効なのが「瞑想」であり、がんや認知症など老化による疾病が訪れるのを遅らせる可能性があるというのだ。
テロメアが長くなるという現象はノーベル生理学・医学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン氏らの研究から明らかになったもので、NHKの「クローズアップ現代」でも取り上げられた。
さらに孤独がテロメアの長さに悪影響を及ぼす。
つまり仏教でいう「愛と慈悲」の実践が有効というわけだ。
テロメアは普通、歳を取るごとに壊れて短くなる。
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つまりテロメアが長い=細胞レベルで若い。
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細胞レベルで若いので、がんや認知症など歳を取るとなりがちな病気になりにくくなる。
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慈悲の瞑想を行うと、テロメアが長くなる。
↓↓↓
つまり慈悲の瞑想には、健康長寿(アンチエイジング)の効果がある。
ということのようです。
【慈悲の瞑想の効果3】ボジティブ感情が増える
「慈悲の瞑想には、ポジティブ感情を増やす効果がある」ということ自体は、けっこう知られているようです。
ですが面白いのは、「慈悲の瞑想をやめた後も効果が持続する」ということ。
これはあまり知られていないのではないでしょうか。
さらには「慈悲の瞑想を行えば行うほど、ポジティブ感情も大きく増える」ことが、実験によって分かったといいます↓
7週間以上の慈悲の瞑想の修行によって、ポジティブ感情が増えたことがわかるだろう。
そして、その効果は修行を止めた後の1週間後になされた測定でも持続していた。
さらに、ポジティブな感情は瞑想に費やされた時間に応じて増えた。
すなわち、瞑想に多くの時間を費やしたと報告した参加者は、ポジティブな感情が大きく増えていた。
一方で、対照群の参加者はなんら変化を示さなかった。
【慈悲の瞑想の効果4】愛情深さが増す
慈悲の瞑想を行った後の脳を分析すると、慈悲の瞑想には愛情深さが増す効果があることが分かるようです↓
有光興記教授によれば、慈悲の瞑想を毎日2時間以上、5年以上も行った熟練者は、1週間行っただけの初心者に比べて、他者の幸せな顔を見た時に、感情を引き起こす「左側の前部帯状皮質(ACC=anterior cingulate cortex)」が活性されやすく、初心者では活性されない感情をコントロールする「右側の下前頭回(IFG=Inferior frontal gyrus)(左側イメージ)」、そして、エピソード記憶やその処理と関係する「右側の楔前部(けつぜんぶ: Precuneus)(右側イメージ)」が活性化されるという(6p195)。
慈悲の瞑想を行うと、ポジティブな感情や主観的な幸せ感が高まるのはそのためである(6p197)。
これは、慈悲の瞑想の修行を積むことによって他人の幸せから肯定的な感情が経験でき、それを自分の記憶と照らし合わせながら共感でき、かつ、ネガティブな感情を経験しても、これを制御できるようになることを示唆している(6p196)。
「ACC」などの難しい言葉が並びますが、ざっくり言えば「他人の幸せを自分の幸せととれるようになる」といったところでしょうか。
「他人の不幸は蜜の味」という言葉がありますが、これとは逆の感情ですね。
【慈悲の瞑想の効果5】共感疲れをしない
先ほどの「愛情深さが増す」効果と多少リンクしますが、実は私たちの多くが考えている「共感」には危険があります。
例えば苦しんでいる人に共感すると、私たち(共感した側の人間)もネガティブ感情のレベルが高まってしまう。
そしてさらには、関係のない一般的な日常を送っている人たちにも、ネガティブ感情を向けてしまう。
このようなことが、ジュネーブ大学の神経科医であるオルガ・クリメッキ博士の実験によって分かったそうです↓
共感の反響を訓練すると、ネガティブ感情や共感が増えた。
しかも、ネガティブ感情は苦しみ悩む人たちに対してだけではなく、ノーマルな日常生活の状況にある人々に対してさえもそれに呼応して、ネガティブ感情が増えた。
このことは、共感が非常に嫌悪すべき経験であって、バーンアウトのリスク要因であることを示唆している。
一方慈悲の瞑想では、他人が苦しむ姿を見ても落ち着きを持つことができる。
しかし同時に、愛情もいだくことが分かっています↓
トレーニングの結果、慈悲瞑想を行ったグループは、人が苦悩する様子を見ると活発になる扁桃体や島皮質、眼窩前頭皮質などの脳の活動が抑えられていました。
またこの変化は、対照グループでは確認できませんでした。
これは、慈悲瞑想を行うことで、他人が苦しむ姿を見ても落ち着くことができるようになることを示しています。
そもそも共感と慈悲とでは、活性化する脳領域が異なります↓
シンガー博士らは、リカール博士に、愛する人への慈悲(loving-kindness)、苦しむ人への慈悲(compassion for the suffering of others)、そして、対象のない慈悲(nonreferential compassion)と異なる慈悲の瞑想状態に入ってもらうように依頼した。
驚くべきことに、このすべてがほぼ同様のネットワークを活性化させた。
けれども、慈悲と関連するこのネットワークは、上で説明した苦痛に対する共感のネットワークとは似ても似つかなかった。
私の体験から見る「慈悲の瞑想の効果」への感想
私が慈悲の瞑想によって、もっとも実感している効果は「愛情深くなる」です。
特に私なりのコツである「慈悲の身体」を意識する(詳細は↓をご覧ください)ようになってからは、目に見えて変化を感じることができました。
ストレス低下や健康、ポジティブ感情についても効果を実感しております。
ですがこれは瞑想全般にも言える効果なので、慈悲の瞑想だけによるものではないように感じております。
共感疲れに関しては、「言われてみると確かにそうだ」という感じですね。
世の中的には、「共感」が手放しで良いこととされる風潮があります。
しかし一方、弱者に寄り添うことを大事にされている方々が、SNSなどで暴言を吐かれている状況を見ることも少なくありません。
おそらく「私はこんなに弱者に共感できているのに、なぜお前はそれができないんだ!」といった感情ですよね。
私も、そのような感情を強く持っている時期がありました。
今完全になくなったかと言われると、なかなか言い切れる自信はありません。
しかし、以前よりかなり減ったというのは確かだと思います。
以上です。
なお「他の瞑想の効果も知りたい」という方は、↓をご覧くださいませ。
「慈悲の瞑想についてもっと知りたい」という方は、↓をご覧くださいませ。
最後までご覧くださいまして、誠にありがとうございました。